海底の先

日常や本、映画などで心が動いた瞬間を文章にします。

感想『人生を豊かにしたい人のための講談』

いま人気の6代目神田伯山(松之丞)から講談を知った典型的なにわかが私です。

 

講談を聞いていると疑問が湧いてきます。

講談とは一体なんぞや????

聞けば聞くほど講談のイメージがぼんやりしていきました。読み物のジャンルがあまりに広い。講談師のスタイルがみんなぞれぞれである。講談の歴史もなんだかごちゃごちゃしている。伝統芸能としての文化的なお堅い部分もありつつ、商売としての面もある。私が感じた講談の魅力はどこからきているのか、これは一体なんなのか。

 

一体なにが講談を講談たらしめているのか?

 

その疑問を解いてくれたのが伯山先生の師匠である神田松鯉先生の『人生を豊かにしたい人のための講談』でした。

 

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マイナビ新書から発売されており、新書らしいタイトルです。けれども、マイナビ新書にある「教養として学んでおきたい…」シリーズともいえる題名にしていないところにこだわりを感じます。

 

松鯉先生の丁寧な語り口で分かりやすく書かれていてスラスラと読むことができました。

読んでいくうちにテレビで観た二ツ目時代の神田松之丞の芸がトリックスターとでもいうような異端であったことが分かります。

「問わず語りの神田松之丞」というラジオでは自らを「チンピラ芸」「弟子に来る奴が今後いたらそれはセンスがない」などど言って笑っているのを少し不思議に思っていましたが、この異端さからくるものかと理解をしました。

 

松之丞の芸の異端さを理解すると同時に、それも講談なのだとも分かります。

基本が分かっているからこそできる異端。紆余曲折があった講談の歴史。

松鯉先生が見てきたもの、経験してきたものたち。

一体何が講談たらしめているのかというと、それは形ではなく精神や美学といったものではないか。そしてそれは社訓のように(?)はっきりと示され共有されているものではなく、それぞれの講談師が作り上げていくものだというように受け取り、講談師はなんてかっこいいんだろうと惚れ惚れとしました。

 

私は私なりに自由に講談の魅力を見つけて楽しんでいっていいのだなと思えましたし、たくさんある読み物のなかから好きな話を見つけてなぜ惹かれたのかと考えて楽しんでいきたいです。

講談と向き合って、美学や「こうありたいと思う姿」を持つ姿勢を強固に持っていきたい。こうしたことが題名にもある「人生を豊かに」ということなんだと思いました。