海底の先

日常や本、映画などで心が動いた瞬間を文章にします。

感想『桂馬の高跳び 坊ちゃん講釈師一代記』

 

六代目神田伯山の大師匠にあたる二代目神田山陽の自伝。

 

神田伯山のPen BOOKSで「これは絶対読んでほしい」と紹介されながらも絶版であった『桂馬の高跳び 坊ちゃん講釈師一代記』が文庫版として出版されたのでわくわくしながら読みました。

 

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お金持ちの坊ちゃんがさまざまなものと出会い、講釈師になるお話。

とにかく、はちゃめちゃでむちゃくちゃのドタバタ劇!今では考えられない、というか昔でもありえないような行動の数々。

周囲の講釈師も個性が強いのなんの。当時の神田山陽の姿はもちろん、講釈界や寄席の雰囲気や風というようなものが伝わってくる、読み物としても講釈(講談)の資料としても面白い一冊でした。

 

「神田伯山」という名跡の凄さもこの本を読めば分かります。

二代目神田山陽の自伝が六代目神田伯山の帯と解説で文庫本化されるということ、はちゃめちゃにエモくない!?とびっくりもできます。

 

たくさんの講釈師や落語家の名前が出てきて混乱したので巻末の一門系図や人名索引がありがたい!

出てきた名前が襲名により受け継がれて現代でも活躍されているために”にわか”の私でも知っていたりして嬉しくなりました。受け継がれている大切なものに触れられた感覚がしました。

 

 

二代目神田山陽はお坊ちゃんとして生まれたからこのような人生になったのではなくて、どんな環境で生まれたとしても芸にしか生きられない人だったのではないか。

そんな人だからきっと六代目神田伯山の活躍も、『桂馬の高跳び 坊ちゃん講釈師一代記』が文庫本になったこともきっとどこかで喜んでいそうだなぁと思います。