海底の先

日常や本、映画などで心が動いた瞬間を文章にします。

『好き?好き?大好き?』R.D.レイン

舞城王太郎の『好き好き大好き超愛してる。』の元ネタになった『好き?好き?大好き?』という詩集があるらしい…と復刊のタイミングで知った。 これだからネットの海は面白いね。 詩というのは教養のなさを思い知らされるというか、「なんだかよく分からない…

「詩」とようやく仲良くなった

「詩の解釈はそれぞれでいいのよ」という言葉は私の上をつるつるとすべるばかりだった。 いや、言っていることは理解できる。 小説でもなんでもどう感じるかは人それぞれでしかないからその延長線上のことだと思えばいい。 それでもある程度の正解はあるはず…

感想『旅する練習』乗代雄介

淡々と進む旅が何故こんなに愛おしく感じるのだろうと思いながら読み進めていた。 サッカー少女である亜美は綺麗だった。あまりに綺麗すぎたのだ。亜美の表情が頭の中から離れない。 途中で出てくる、みどりという女性には多くの人が共感を覚えるだろう。な…

海堂尊『コロナ黙示録』感想

「世界初の新型コロナウイルス小説」 新型コロナはリスキーな目下の問題なのに、長編小説を書きあげてしまうだなんて速筆の海堂尊先生だからこその作品である。 『チーム・バチスタの栄光』からのファンとしては帯に書かれている登場人物を目にするだけでニ…

感想『桂馬の高跳び 坊ちゃん講釈師一代記』

六代目神田伯山の大師匠にあたる二代目神田山陽の自伝。 神田伯山のPen BOOKSで「これは絶対読んでほしい」と紹介されながらも絶版であった『桂馬の高跳び 坊ちゃん講釈師一代記』が文庫版として出版されたのでわくわくしながら読みました。 お金持ちの坊ち…

感想『人生を豊かにしたい人のための講談』

いま人気の6代目神田伯山(松之丞)から講談を知った典型的なにわかが私です。 講談を聞いていると疑問が湧いてきます。 講談とは一体なんぞや???? 聞けば聞くほど講談のイメージがぼんやりしていきました。読み物のジャンルがあまりに広い。講談師のス…

市民のための図書館という存在について

市内の図書館に久しぶりに行った。 利用者カードを再発行しようとしたら、名前を書く欄の横の性別の「男・女」の欄が手書きで消されているのが目に入った。 ああ、そうだ、わざわざ性別を書く必要ないものね。 性別を書かなくてよいって、誰かにとっては細か…

感想『ゴールデンボンバーのボーカルだけどなんか質問ある?』

『ゴールデンボンバーのボーカルだけどなんか質問ある?』 鬼龍院翔…キリショーが某にちゃんねる風スレッドの形式で幼少期から近年までを語る自伝。 重めの出来事が書いてあってもこの形式だと気張らずに読めるうえに分かりやすく、型にハマらないゴールデン…

小学生が読書を手に入れること

「あんたには本があるからいいね」 しみじみと言われた言葉。小学生の頃に母から言われて印象に残っていた言葉だ。母は本を読むどころか、音楽も聴かず酒も飲まずかといって料理が好きとかそういうわけでもなく文化を摂取することも趣味も娯楽もない人である…

嫉妬すらできない

9月が去った後の朝は小雨が降っていた。涼しくて過ごしやすいはずの気温であるのに手足が心なしか重い。気に入っている傘を選ばず、ビニール傘を持つ。 出勤途中は相も変わらず芸のないネットサーフィン。はてなブログのトップページである記事に目が留まる…

自分が綺麗じゃないこと知ってるくせに

「すごく根が良いから」と言われて嬉しくなった自分がいた。恥ずかしかった。明らかにお世辞だし、他になにも褒めることがなかったから出てくる言葉なのに嬉しくなってしまったのだ。ほかの人にも同じようなことを言われて同じことを思った記憶が出てくる。…

『絶滅危惧職、講談師を生きる』感想

GWに神田伯山にハマった話 - 海底の先 https://a2020-01.hatenadiary.jp/entry/2020/05/10/223430 ハマり続けておりまして、本を買いました。 神田伯山をラジオ、テレビ、YouTube…いろんなメディアで見ると、不思議に思うことがありました。なにかを突き詰…

『読書について 他二篇』 感想

ショウペンハウエル(1788~1860)による『思索』『著作と文体』『読書について』の三篇が納められている。訳は斎藤忍随。 『思索』 読書以前に我あり、だと思った。 私はいつからか、私の考えたことなど他人がすでに上手に書いているのだという考えを持って…

『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するII』感想

この本は、「欲望の時代の哲学2020 マルクス・ガブリエル NY思索ドキュメント」というNHKの番組から生まれたものである。2020年2月25日から3月24日にかけて5回に分けて放送された。この番組は主張や講義ではなくマルクス・ガブリエルというドイツのボ…

『居るのはつらいよ』感想

本の紹介は本の帯に任せるとして・・・ ヤンデル先生のヨンデル選書で出会った本です。 居るのはつらいよ・・・存在の危機。その気持ちは心のどこかにいろんな形で私のなかにもいつもいる。沖縄の精神科デイケア施設で「素晴しい愛をもう一度」やゴールデン…

『どこでもない場所』著 浅生鴨 感想

病理医ヤンデル先生の選書コーナーで出会ったエッセイ集である。 どこでもない場所……このワードで脳内でヒットする記憶があった。 舞城王太郎の『煙か土か食い物』の序盤の「大体このアルバムのタイトルだってありきたりだけど超いいじゃないか。ミドルオブ…

『どこからが病気なの?』 著 市原真(病理医ヤンデル) 感想

『どこからが病気なの?』 そんなの定義ができるわけないじゃん、その上でそこを突き詰める意味はあるんだろうか?と思った。 それでも読んだのは、いんよう!(https://twitter.com/inntoyoh/status/1229712257753350145‬ )でヤンデル先生が中高生向けに本…

小説『ロマンスドール』 感想

「妻が、○○○した。」(追記 ネタバレになりかねないので伏せ字に変更しました) というインパクトのある書き出しに少々戸惑いつつ、自然と引き込まれていきました。 ラブドール職人である哲雄と、美人で理想の妻を絵に描いたような存在である園子の夫婦の物語…