舞城王太郎の『好き好き大好き超愛してる。』の元ネタになった『好き?好き?大好き?』という詩集があるらしい…と復刊のタイミングで知った。
これだからネットの海は面白いね。
詩というのは教養のなさを思い知らされるというか、「なんだかよく分からないけれどすごいんだろうなというアート」的に感じてしまうものがある。この詩集も正直に言えばそう。
R.D.レインは1927年イギリス生まれの精神科医で精神分析家。
この詩集をよく理解するためには精神医学の知識、それも当時の雰囲気、そのなかで彼がどう考えていたかを知っている必要があるんだろう。
後世のいろんな作品の元ネタになっているにも関わらず、絶版になっていることが頷けた。
あまりにマニアックすぎる。
精神医学や精神分析については益田裕介先生の「精神科医がこころの病気を解説するCh 」https://youtube.com/@masudatherapy?feature=shared
がきっかけでふんわり知っている。
だから「ユダヤ人」と「精神分析医」という言葉が同じ詩で出てきたときに、精神分析をつくったフロイトはユダヤ人だったな…と分かる。ただ、いまいちその詩をどう解釈すべきか分からん。
この詩集における「27 どうにもしかたがない」。の問答の彼はおそらく精神科医で、すっごいイヤな奴、そのイヤな奴加減というのはめちゃくちゃ伝わった。村上光彦による訳者あとがきにもこの詩に言及があり、レインがどのような背景を持ち、なんのためにこの詩を書いたのか理解度があがった。
私が言うまでもないが、訳者が本当に素晴らしい。
異論が出ると覚悟した「好き?好き?大好き?」との訳でなければ、後に様々な作品の源泉になることはなかったことは明白。
訳者あとがきを読めば、この詩集を紐解く手掛かりがたくさんある。訳者あとがきから醸し出される文学への愛情に乗せられ、深い世界に潜り込んでみたくなる。
1927年イギリス生まれの精神科医がみてきた世界を詩にして、日本のフランス文学者が1978年に素晴らしい形で訳して、様々な作品に影響を与え、やがて絶版となるもゲームで引用され話題になり、それを機として2023年に復刊して、私の元に届いた世界。
なんか、不思議だ〜
『結ぼれ』も復刊してほしいなぁ