海底の先

日常や本、映画などで心が動いた瞬間を文章にします。

小学生が読書を手に入れること

 「あんたには本があるからいいね」

 

 しみじみと言われた言葉。小学生の頃に母から言われて印象に残っていた言葉だ。母は本を読むどころか、音楽も聴かず酒も飲まずかといって料理が好きとかそういうわけでもなく文化を摂取することも趣味も娯楽もない人である。それを苦にすることもない人である。

 

 そんな人が言った言葉。好きなものがあっていいね、というニュアンス。すこし珍しいものをみるような、安心したような、肯定してくれるようなニュアンス。

 

「読書してえらいね」

 なんて言葉、誰かに言われたかもどうかも覚えていない。なんでもいいから褒められたい気持ちが強いのに覚えていないのは、言われたことがないからか、それとも読書は楽しいことだから褒められることに違和感があったからか。

 

「本ばかり読んでいたらダメ!」

 この言葉はたぶん言われたことがない。

 

「妹の世話があったから、あんたには本の読み聞かせなんてしてない。勝手にいつのまにか読み始めた」

 こうも言われたこと思い出したなぁ。否定はせず、推奨もせず、好きにさせておくのが母の距離感だった。いま思えばそれはありがたいことだったのかもしれない。

 

 いやでも、本買ってほしかったな〜〜〜。学校の図書室と市内の図書館と塾にあった本棚に最大の感謝を….…