忘れてしまった感情、感覚や場面がある。
言われて嬉しかったこと。
ふと息がしやすくなったとき。
偶然見れた綺麗な景色。
悩んだ末にたどり着いた場所。
他人には重要だと思えなくても私には大切なものたち。
絶対忘れないだろうと思っていたことこそ忘れていることがある。強烈であるほど瞬間で、安心しているときこそ自然に任せていて、複雑であるほど言葉での表現ができないからだ。
人間ってそんなものかもしれない。いろんなことを忘れていけなかったらそれはそれで多分つらいんだろう。
それでも、そのときもがいて掴んだひとかけらの光を忘れているということがなんだか残念なような気がする。必要なものは砂金のようにどこかに残っているのだろうか。よく分からない。
あまりに残念だから多分、言葉にすることをようやくし始めてるのかもしれない。
それでもやっぱり感覚や感情は言葉そのものではない。言葉に当てはめることで変質してしまいそうで怖くなるけれど、なかったことになってしまうよりかは良い。
思ったことをそのまま言葉に当てはめていくと無味乾燥とした装飾のない文章ができあがってしまう。違う、こんなんじゃなくてもっと体温があるはずなのにと思う。
きっと、感覚や感情を言葉に当てはめるのではなくて再現するためには物語を書く必要があるんだろう。