海底の先

日常や本、映画などで心が動いた瞬間を文章にします。

観劇体験について言葉にしたいが難しいんだYO!

 劇場で演劇を観ました。それは一時期、新型コロナウイルス 「COVID-19」によってわたしたちが失っていたものでした。「COVID-19」が一体どんなウイルスなのか、対策はどうしたらいいのかが少しずつ分かってくると、演劇も再開され始めました。

 

 いまでもそれは以前と同じものではありません。声援を出すことは禁じられ、客席も減らした状態です。これから以前の状態に近づいていくのか、それともまた失ってしまうのかは誰にも分かりません。

 

 実際に演劇を観たのはいつぶりだったでしょうか。甘美な歌声を、楽器の音色を全身に浴びました。その瞬間にしかない表情と仕草を目に焼き付け、全身から溢れる気迫を感じました。悲痛な叫び声、歓喜の黄色い声、つぶやくような独白の声、たくさんの声を受け止めました。

 そして闇に包まれました。またある時は眩しい照明が降り注いでいました。

 

  舞台のうえには物語のなかの人物が確かに存在していました。わたしたちはそれを全身で感じました。物語を感じ取り、受け止める自分の身体がそこにあることを認識します。それとともに、全身が感情の入れ物であることに気が付きます。全身が感情で満ち足りた瞬間、身体とその外側の区別がなくなり物語に入り込みます。客席全体が感情の渦へと変化します。

 

 拍手。スタンディングオベーション。わたしたちは通常はバラバラの個体ですが、この瞬間だけはひとつの塊となります。

 

 これらの感覚はとても素晴らしく、心が栄養で満たされ、さまざまなものを愛おしく感じ、日常をまた生きていくことができます。わたしたちにとって実際に芸術を堪能するということは必要不可欠なものです。