いつもの道と少し違うところを歩いてみる。
チェーン店が並ぶ大通りの隣の道を選んだ。個人店が並ぶ昔ながらの商店街の名残のようなものがある世界が広がっていた。和菓子屋、ケーキ屋、やっているのか近くに寄らないと分からないような定食屋。
和風の小物がある雑貨屋に入ってみた。音質の良くないラジオが流れていた。小さな空間にいろいろなものが詰め込まれている。キーホルダーやタオルやポーチ、手作りのお手玉。よく見ると不思議な空間である。一段隔てたところに畳の空間があった。着物が用意されている。
「ゆっくりどうぞ」
和服を着た上品なおばあさんが声をかけてくれた。奥のほうにある長細い廊下が暖簾から見えた。
手作りであろう布マスクが売っているあたりからこの時代に生きているお店であることを感じる。おそらくこのお店は元々は雑貨を主に売っているわけではなかったのだろう。
雑多でありながら落ち着く場所だった。おばあちゃん家のにおいがした。ずっとここにいたいと思った。